屋根裏部屋
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  1・・2・・3・・4・・5   ・・二次二次創作「舞う風のゆくえ」  
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少年は丘を越えて

 「おい、あのちっちゃいのは元気か。」
 チュムチの大声に、解散しかかった兵のほとんどが、思わず首を振り向けようとして固まった。
 馬上のチョロはまっすぐに背を伸ばしたまま、駆け寄る大柄な斑馬を見て、ため息をついて天を仰いだ。人が大きければ馬も大きい。チュムチは片腕で御しながら軽々と馬をいなし、今度は動きに似合わぬ声色でこそこそと囁いた。
 「青龍の女に手を出すと、切り刻まれるという噂を知っているか。」
 「知らん。」
 そのまま振り切ろうと馬首を回したところに、ちょうどスジニが視線を投げている。やり過ごそうと目を逸らした途端、その背後から近づく漆黒の馬を見て、諦めたようにチョロの鹿毛が止まった。太王はぶらぶらと馬を進め、軽く頭を下げたチョロに声をかけた。
 「やっと家が役に立っているらしいな。」
 近衛隊の詰め所から美少女を抱いていった話は、全軍を駆け巡っていた。風の件はかろうじて伏せられたが、やはりどこからともなく漏れ伝わる。もちろん全てを寝物語に太王に語ったのは当の近衛隊長で、澄まして付き従うスジニを、チョロはむっつりと睨んだ。
 「休暇が欲しいそうだが、三人で相談して好きにしろ。」
 「それから—」
 珍しく口を開いたチョロに、太王は柔らかく微笑んだ。
 「なんだ。」
 「—関彌城の滞在許可を。」
 「もともとお前の城だ。」
 あまりよい思い出がないはずの城塞だ。そこへ行こうというのか。
 「あそこにはいつも用事が山ほどある。見つくろってやるから、しばらく居るがいい。」
太王は笑って頷くと馬首を回した。近衛隊を率いたスジニが王を追って走り出す。その姿を見送り、だだっ広い練兵場にただ一騎で佇んでいたチョロは、ようやく手綱を引いた。

 

 わたしの小さな銀色の龍を
 懐に抱いて馬で行こう
 おまえにあの樹々を見せてやろう
 すべての哀しみを置いて来た
 あの蒼い森を

 

(了)

 
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