屋根裏部屋
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朱雀の将軍

11 昂り

 固い腕に囚われたまま時が過ぎた。
「こつがあると言っただろう。」
王がスジニのうなじに口づけた。ざらざらと固い髭の感触。
 「やみくもに動いても抜けられない。」
そのまま肩口に王の頬が密着し痺れた手首が掴まれた。振りほどく事を忘れてスジニがかすれた声を上げた。
 「王様、このようなー」
 「このような、何だ。」
 「このようなお叱りはー。」
 「いやか」
 「鎧を、つけておりますー」
 「そうだな。わたしは将軍を叱っているんだ。」
鎧の紐に手がかかった。我に返って身を捩ったが、正面からきつく抱きしめられ、完全に押さえこまれた。
 「この体では接近戦は不利だな。」
 「な…」
 「しなやかで素早いが、華奢で力がないー」
言いながら全ての紐を解いてしまった。掌がゆっくりと背をなで下ろした。
 「わかったか、男と正面から組み合うな。こういう目にあう。」
スジニは懸命に鼓動を押さえ、悔しさで燃えるような目を向けた。太王も戦場の目でスジニを捉えた。片手で荒々しく顎が掴まれると唇が重ねられた。右に左に逃げる頬を追われ、その隙にと肩を翻したが、脚をかけられて押さえ込まれた。後ろ手に腕を組まされて背後から捕まえられると、王の唇が首筋をゆっくりと這った。腰が震え足元がふらつく。鎧に手が差し込まれ革帯が落ちた。逞しい手が荒々しく胸元を探る。やがて鎧が完全に落ちると、王はスジニの小さな体を腕の中でやすやすと回した。深く差し込まれる舌と髭に擦られる頬の痛みに気が遠くなる。やがてさんざん蹂躙した舌が去ると、小さな喘ぎが漏れた。朱雀将軍は荒い息で震える口を開いた。
  「鎧で戦うのはー苦手なんです。重くて窮屈で。」
声をたてずに王が笑った。
  「いちどパソンに怒鳴られてこい。これでとても軽くなったんだからな。」
何かに縛られたように動けないまま、鎖帷子の襟元が解かれ、王の唇がその下をくぐった。無数の傷跡がある。そのひとつに唇をつけると王は乱暴に吸った。次々に傷跡が辿られ赤い跡を残した。
 スジニは立っている事ができなかった。ここは王の天幕の中で、司令室だ。今にも誰か来るかもしれないと思うが身体は言う事をきかない。鎖帷子と肌着が手荒くたくし上げられ、じゃらりと音をたてる。王は真っ白な胸に顔を埋めた。自分もそれを望んでいる事を今やスジニははっきり悟った。逃げられないのではなく、逃げないのだ。
 「王様—」
 肌に歯を当てるとスジニが震えた。
 胸元から唇を離すと奥の間まで横抱きにして歩き、寝台に放り投げた。野戦の固い寝台にスジニが倒れ込むと、すぐに隆々とした背が四肢を押さえつけた。露になった肩口には吸われた跡が赤い花のように散り、汗ばんだ肌が光っている。潤んだ瞳に一片の怖れと小さな怒りが浮かんで煌めく。同時に恋い慕う男を求める期待を確かに認め、王はゆっくりと目を瞑った。
  「組み敷かれて、まるで今にも犯されるようだったぞ。戦で猛った男がどういうものか、お前は知らないだろう。」
こんな荒々しい王をスジニは知らなかった。大殿でやさしく笑っていた王は、戻ったら娶ると言い、自分はそれを嬉しく聞いたのではなかったか。上衣の上から王の掌が這った。一枚の布越しに腰から胸へ、頭の上でひと掴みにされた腕まで、確かめるように撫で上げる。
  「女のお前を戦場に連れてくるには、なかなか覚悟がいるんだ。お前も覚悟しろ。」
涙が滲んだ。今にも溢れそうになったそれに唇をつけ、王はそのまま顔中に小さな口づけを降らせた。
 「奪い、…犯し、…獲る、戦場でお前はそんな者に囲まれているんだ。」
掌がじかに肌に触れるとびくりとスジニが跳ねた。王は両膝でスジニの脚の動きを止め、回した手でゆっくりと小さな背を撫でた。
  「この身体を戦場に置くのなら、二度と今日のような目に遭うな。」
上衣が捲り上げられ、小さな悲鳴が漏れた。頬を撫でた手が首から肩へ下り胸を捉えた。
 「わたしが恐いか?」
 「わたしは王様のものです。ずっと前から—。わたしの王様」
頭の芯が痺れたまま、スジニは掠れた声でようやく囁いた。
 腕が解放され、王は両腕でかき抱くとスジニの胸に口づけた。荒々しい目をして、しかしあくまで優しく王の膝頭がスジニの脚を割る。差し入れられる指の感触に、スジニは身を捩った。潤いを確かめた王はスジニの目を見て囁いた。
  「お前はわたしを猛らせる。」
  躊躇いなく一気に貫かれた。スジニの息が止まり、それから身体がふたつに裂かれる痛みに呻いて背を反らした。その背に腕を回し、折れそうに抱きしめながら王は奥へ奥へと求めた。
 「お前の中に、炎があるーとても熱いな…」
嘆息した王は、ゆっくりと動き始めた。

 

 うわ言のように呟きながら、王はじぶんの女を征服した。
お前は猛った炎さえ包んでしまう。とても熱い。とても心地よい炎だ。スジニは一瞬目を見開いたが、またすぐに熱の中に溶けていった。わたしの中に炎がある—王様がそうおっしゃった。炎を包む炎。それは心地よいと。スジニの瞳から涙が流れ落ちた。
「辛いか。」
目が合うとさらに涙はいく筋も流れ、スジニは微笑んだ。
 「辛いか?」
また王が尋ねる。何が辛いのか、身体か、心か、その両方を労っているのか。しかし王はスジニを休ませなかった。
 「いいえ、いいえ」
スジニは懸命に答える。自分の中の王とそれを包む自分自身の熱に溶けてしまいそうだ。 大きく息を吐くと全身が震えた。両手を伸ばして愛しい王の首を抱いた。タムドクは炎の中に突っ伏した。

 

私の中に炎がある、王様がそうおっしゃった。
炎を鎮める炎がある…それはとても熱くて心地よい…
私の王様がそうおっしゃった。

 
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