屋根裏部屋
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テサギエロティカ

 城門で、ひとりの衛兵が手をかざして彼方を見やった。遠く先触れの一騎が見え始め、土煙を上げて近づいてくる。一気にその姿は大きくなり、やがて蹄の音が届いた。
 肩には赤い徽章。背負った太王軍の小旗が風にはためいていた。
 朱雀軍の凱旋だ。間もなく朱雀将軍のお姿があるぞ!
 我先にと衛兵が居並ぶ。凱旋する軍を一目見ようと、気配を察した民も騒ぎ始め、国内城下はにわかに活気づいた。

 

 予定より少し早い凱旋だった。百済国境へ鎮圧に発ってから、ひと月と十日。弓を背負ったスジニが城門をくぐると、待ち構えた民の歓声が湧いた。黒い鎧のしなやかな姿は、国内城の民にはおなじみの姿だ。一本に固くまとめた髪を背に垂らし、愛馬の鞍からまっすぐに前を見据えている。いつからか使い始めた金の髪飾りが、きらりと晴天の光を弾いた。無事に城門をくぐった安堵からか。口元にはかすかに笑みが浮かんでいる。すぐにその視線は民の頭上を越えた。眩しそうに王宮の方角を見つめると、その視線のまま、まっすぐ主の元へと向かった。

 

ふたりの凱旋将軍は、兵の一団を引き連れて大殿に入っていた。戻ったばかりの兵たちは、持ち帰った勝利に浮かれ、小声で囁きかわしている。そこには生死をともにした者の親密さがあり、スジニはいつものようにそれを楽しんだ。
 ほどなく侍従が現れた。次いで、懐かしい足音がする。大股で足早な、いかにも長身の足音。
 黒っぽい上下に上着を羽織った、いつも通りの太王だ。臣下の前で常に絶やすことのないかすかな笑みが、瞳に柔らかな蔭をつくっている。けして玉座に坐らない王は、帰還した兵と同じ床に降り、ゆっくりと頭を廻して一団を眺めた。
 自分を素通りした視線に、最前列のスジニは意外そうに目を開いた。もう一度王の視線が通り過ぎる。次第に凱旋将軍の口元に笑みが浮かんだ。笑みを隠すように、そのまま少し目を伏せて言葉を待つ。低く通る声が響いた。
 「手際よく収めたようだな。この速さは賞賛に値する。ご苦労だった。兵と馬をよく休めてやれ。」
 それから一人一人に声をかけていった。出征中に子どもが生まれた者。親に死なれた者。手柄を上げた者には報償と昇進を約束し、そのいちいちを書記が書き留める。下位の者から始まったそれは、ようやく将軍へと行き着いた。
 「ハン将軍、ご苦労だった。今回限りの編成を解いて、兵を戻してくれ。あ、今後は馬を殺すなよ。」
 馬を失って戻った将軍に軽口を投げると、部下からも笑い声が上がる。
 「ともかくみなご苦労だった。」
 もうひとり残った将軍の前で言葉を止め、そのまま改めてみなを慰撫する。揃って頭を下げる一団の中で、スジニだけが頭を上げて微笑んでいた。すでに退出に向かった王が、ちらりと笑みを投げて首を振った。
 「朱雀将軍」
ほんの一瞬。匂うような色香が溢れた。すぐに首を回して歩き出す背後に、いつものように近衛隊長が従う。戦場で完璧な采配をふるい、同じ鍋から粥を食った将軍をあっさりと配下から奪い取り、太王は足早に姿を消した。

 

 どこで消えたのか、侍従はついていなかった。庭先から逸れて階段の蔭に降りたとき、スジニは大人しく従いながら俯いて笑った。
 「そう笑うな。」
振り向いた王も笑っている。そのままじっくりと、頭の先から爪先までを眺め、戻した視線を微笑んだ瞳に据えると、腕を広げて抱き取った。
 「なぜまっすぐに、わたしのところに戻ってこない」
 鎧の上から、肩口から背へと撫で下ろす。もどかしい感覚に、スジニの笑みはますます広がり、ゆっくりと目を閉じた。
 「王様、わたしが率いていったのですから、みなと一緒に大殿に行かないと。それに—、これは約束違反です。」
目を閉じたまま腕の中でなじる。鎧をつけている時は、男として扱うと—。何度も破られる約束は、ふたりの間で繰り返されるお決まりのことになっていた。きっと侍従が立って密かに人を払っているだろう。
 ゆっくりと両掌が頬を包む。腕を放されたスジニは心許なそうに、今度は自分の腕を巻き付けた。身を反らすと鎧が固い音で鳴る。唇が合う瞬間までふたりとも目を開き、互いの瞳を覗き込んだ。
 ゆっくりと唇が合ったが、すぐに熱い舌が深く侵入した。吸われ、掻き回される一切を、スジニはされるがまま受け入れ、かろうじて応えた。唇を舐めるようにしながら離され、がくりと膝が抜ける。顎を上げたまま、固い胸に身体を預けた。

 
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