屋根裏部屋
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テサギエロティカ

 白い絹の裾を乱して、大きな掌が這っていた。竹と布、革を使って巧妙にくるまれた足先を伸ばし、はじめ労るように臑を撫でていたのが、やがて小さく締まった膝に這い上がり、今では柔らかな内腿を探っている。
 「つくづく、骨を折るのはごめんだと思ったぞ。お前がこんなに痛がるのを初めて見た。」
 声にならない息が漏れた。
肘をついて喉を反らし、身を捩る。柔らかな脚は無遠慮な手をきつく挟み込むが、長い指は意に介さず奥をまさぐっている。押しつぶされるような指先の動きで息が止まった。腰が震え、全身がわななく。


 「いった——————————————っ!」


 普段なら甘い声で鳴くところを、体をふたつに折って飛び起きた。長々と寄り添っていた王も、思わず一緒に身体を起こす。好き勝手に探っていた手を引いて、まじまじとスジニを見た。ぐったりと身体を伸ばし、半身を捻って顔を床に伏せている。どうやら必死に、足先を動かすまいとした格好のようだった。

 

 ふたりが夜着に着替えた後では、誰も寝間には入らない。いつの間にかそれが暗黙の了解になっていた。ところが今は、ばたばたと近づく音がする。王はしたり顔で笑みを浮かべ、素早く白絹を羽織った。スジニにそっと夜具をかける。すぐに微笑みは笑いに変わり、声が震えた。おい、だいじょうぶか。お前の忠実な侍従が—
 夜具の上からするりと尻を撫でると、ちょうど若い侍従が駆け込んで来たところだ。
 「明日の朝一番で、フウ先生を呼んでくれ。添え木を締めてもらいたいと。だいぶ腫れが引いたようだ。中で足が動くと痛むらしい。」
 「わかりました。」
侍従は呆気にとられていた。先ほど痛みで叫び、今は長く伸びた妃の横で、今にも吹き出しそうに王が笑っている。実際のところ、小さく吹き出したかもしれない。訝し気に下がる侍従の背に、王の声がとんだ。
 「それから、枕をもうふたつ持って来てくれ。」

 

 枕を抱えた侍従が戻った時には、スジニもひとしきり笑った後だった。こんな怪我をしても睦もうとする欲の深さと、侍従の動きに右往左往する滑稽さが相まって、ふたりともなかなか笑いが止まらなかった。
 「王様はたとえ閨を覗かれようが動じないのかと。」
 「覗かれる趣味はないし、お前も気になるだろう?」
仕えられる立場、ましてや王だ。召使いなどそこに居ないのと同じに振る舞う者のほうが多いだろう。どうも王様は違うようだ。ごく普通の女である自分に気を使っているだけではないらしい。
 そそくさと枕を置くと、まだ若いジンシクは、まともに顔を上げずに出て行った。そこでようやくスジニは半身を返し、仰向けになって寝台に坐った王を見上げた。
 「ほんとうに、動かなければ痛まないのか?」
 厚い胸が被さる。羽織っただけの絹が開き、思いのほか白い、滑らかな肌が剥き出しになった。思わず伸ばした細い手が、諾の返事となっていた。夜具をめくり、枕を連ねてそっと足先を乗せるとそのまま撫で上げた。
 「さっきはジンシクが?」
 「ああ。お前の悲鳴でとんできた。」
悲鳴だなんて大げさ…な…。そこで声が途切れた。

 

 さきほどから随分戯れあって、内腿までがしっとりと濡れている。再び指先が侵入するのを、スジニは小さな声を上げて迎えた。
 肩口にも枕が差し入れられ、軽く頭を起こしたスジニの唇が柔らかく塞がれる。滑らかに蹂躙する舌と指を身体の中に感じながら、息が荒くなっていた。膝が小さく開かれると、さらに指が滑らかに動く。ずいぶんやさしい。
 「なんだ?」
声が聞こえたかのように問われる。頭の芯が痺れたスジニは、そのまま言葉を舌に乗せた。
 「今日は—ずいぶん、やさしい…」
 声をたてずに王が笑う。怪我人を抱くのに苦労しているんだ。また痛い思いをさせるわけにはいかない。
 小さく開いた脚を挟み込むようにして、腰が合った。滑らかに、じりじりと押し開く。やがてぴったりと自分の場所におさまった王は、そのままじっと動かずにいた。スジニが自分を包み、波立ち、締め付ける。いつの間にか瞑っていた目を開くと、スジニが見つめている。半ば開いた唇を柔らかく吸い、舌先を弄んだ。
 「ゆっくり動いてやるから—痛かったら叫べ。」
くすくすと笑いが漏れる。きっとまたジンシクがとんでくる。
 そこで笑いがとぎれ、大きなため息とかすかな喘ぎ声が取って代わった。
ゆっくりと大きく引いていき、また侵入する感覚に、スジニの全身は小さく震えていた。密着して擦られ、自分でも知らない奥底に当たる。繰り返されるうち、波に揺られるようになり、ほかの全ての感覚が消えた。ただ押し開かれることだけに没入する。はじめて知る静かな快感だった。
 穏やかに昇り詰めていく上気した目元に、王は愛おし気に唇をつけた。愛しい女がゆるやかに達するのを見届けたかったが、そこで諦めたようにゆっくりと目を閉じた。
 お前とすべて溶け合うような気分だ。これはこれで—いいな。
自分もそのまま大きな波に乗ると、ただ一点に向かってゆるやかに吸い込まれて行った。

 

(了)

 

 
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