屋根裏部屋
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テサギエロティカ

 暴れ馬が一頭。
太王臨席の訓練の後、馬場には多数の近衛兵が残っていた。急に後足立ちになって駆け出した馬は、一体何に驚いたのか。半分はずれた鞍をぶら下げて、滅多矢鱈に駆け始めた。土煙が上がる。その先にいたのはスジニだった。
 「隊長!」
怒号が飛ぶ。おさえろ!おさえろ!あたりはすっかり土煙に包まれて目も開けていられない。
 まっすぐに蹄を蹴立ててくる馬を、スジニは正面から見据えた。地を蹴って横に飛んだ身体を掠めて馬が走り抜ける。すれ違いざま、手綱を捕らえたスジニが馬の首にぶら下がるようにして一緒に走った。掴んだ手綱ではずみをつけて背に飛び上がる。
 太王は静かに一部始終を見ていた。騒ぎの中、一言も発せずにスジニの動きを見守る。スジニが馬の背に座って脚を締めたとき、かすかに王が微笑んだ。しかし次の瞬間、外れかけた鞍が完全に落ち、スジニの脚に絡んだ。それを嫌った馬はまた棒立ちになり、スジニは馬の首に捕まって立ち上がった。侍従は王が息を呑む音を聞いた。
 一騎が並走していた。横抱きにスジニを捕まえながら、同時に棒立ちの馬の手綱をとった。土煙の中、二頭はようやく止まり、暴れ馬は手綱を放されてしばらくトコトコと歩いた。スジニを横抱きにした青年はそのまま駒を進め、やがて馬を降りた。スジニが何事か話しかけ、手を振って拒んだが、男はそれに構わず抱えてそっと降ろした。脚を伸ばすスジニを心配そうに見つめる。屈み込むと束ねた長い髪が肩口からぱさりと前に落ちた。スジニは首を反らして乱れ髪をうるさそうに払う。そのしなやかな姿に目を奪われ、青年はしばしうっとりとその横顔を見つめた。俯いた白い頬につい手が伸びた。
 伸ばした手は、剣の柄で遮られた。見事な彫りの入った長い柄。太王の佩剣が男の手首を抑え、次いでゆっくりと降ろした。
 「ご苦労だった。何者だ。」
男の代わりに侍従が答える。
 「陛下、契丹からの使者の護衛でございます。騎馬の訓練を見たいと申しまして、近衛隊長が許可を。」
 「道理で馬の扱いに長けている。」
 そのまま男の名も聞かず、太王は歩き去った。ありがとう、助かった。スジニが小声で言うと、後ろ手に手を振った。一見して穏やかな王の機嫌を知るのは、後ろに従う侍従とスジニだけだった。

 

***

 

 「下がっていろ。」
それまで無言だった。宮殿に入って馬を下りると、王はすぐに侍従を追い払った。いつもは手で小さく合図をするのが、珍しく声をかけて命じた。スジニは背後に従ったが、いつもより少しだけ太王の声が大きいことに気がついた。王は柱の蔭で立ち止まり、振り向いてスジニの爪先から頭の先までをじっと見た。
 「大丈夫か?脚は?」
 「鞍がぶら下がったくらいで、どうにもなりはしません。」
きびきびと快活なスジニの返事に、王の眉間はほぐれ始めた。
 「そんなことより、きっと師匠がお待ちしています。契丹からの親書のことで、書記も準備をしていますから」
 契丹。歩き出した王はふと道を逸れた。ついて歩くのが習い性になっているスジニは、どこへ行くのかと聞く前に後を追う。中庭からさらに逸れたとき、さすがに声をかけようとしたがそのまま黙った。流れに設えた小さな橋の蔭に入ると、王はいきなり立ち止まって振り返り、足早な王を追っていたスジニは革の胴着に思い切りぶつかった。
 「—失礼を」
スジニが背だと思ったのは王の胸の中で、そのまま抱きとめられた。頬を挟まれ、唇で唇がこじ開けられる。息が詰まり、スジニは唇を合わせたまま目を開いて王を見た。
 「こういう時は目を瞑っていろ。」
でも、と抗う声は飲み込まれた。貪るように啄まれてスジニは喘いだ。首を廻してもがき、ようやくその唇から逃れた。ここはまず誰の目にも触れない。笑って囁く声に、諦めたように身を任せた。宮殿で暮らした年月が違うのだから、こうして死角に引っ張り込まれてはスジニはとても敵わない。
 「申し訳ありません。」
 「何がだ」
そっけなく応じる。鎧姿のスジニを胸に抱いたまま、腕に力を込めた。
 「さきほどの馬場でのことです。」
 「あれでは助けがなければ、さすがのお前も振り落とされていただろう。」
取りつく島がない。胸の中でスジニがもじもじと動く。
 「王様。不甲斐ないところをお見せして申し訳ありませんでした。でもあの者は恩人です。わたしにお怒りなのはごもっともですが、よそ者の出過ぎた真似と叱らないでください。」
 「お前の恩人を叱るわけがない。改めて礼を言うことにする。」
気がない様子で答えながら、笑いが漏れた。あの男がお前をどんな目で見ていたか、お前はまったく気づいていないのか。恩人か。まあいいだろう。だが釘は刺す。気に入らないからな。またスジニがもじもじと動く。
 「王様。これはお約束と違います。離して頂いても?」
軍装の時、居室の外では女として扱わないよう約束していた。離して頂いても、だと?振りほどけば抜けられるくせに。王は笑いながら腕を広げ、スジニを解放してやった。歩きながら背を向けたまま、背後の近衛隊長に言った。
 「今日は早く戻れ。」
王と近衛隊長は、王事の元へと急いだ。

 

***

 

 「あまり刺激的なものを見せるなよ。うん?」
王の指が脚をなぞる。柔らかな下腹に唇をつけると、スジニがくぐもった声をあげた。
 「——あの馬、おさえられると思いましたが—」
ようやくまともな言葉を繋ぎ合わせ、きれぎれの息でスジニが答える。白絹の夜着は衿を合わせる間もなく乱暴に開かれ、薄衣が汗ばんだ肌に貼り付いていた。それをたくし上げ、王の頭がゆっくりと動いている。下腹に頬擦りすると太腿を持ち上げて内股を甘く噛む。スジニがじれて脚をふるわせた。唇も合わせないまま、こうして体中を舌が這っていた。
 「申しわけ—」
喘いで言葉が続かない。
 「確かにそれにも驚かされたが—」
内股のその奥を、柔らかく噛まれ、吸われてスジニが思わず声をあげる。指を感じると、さらにすすり泣くような声をあげた。今日は許してやらない、王が耳元で囁く。将軍、乱れた髪はあの男には毒だったようだな。もちろん普段のお前ならば、ほかの男にあんな姿を見せるわけはないが。あの男、今にも頬を撫でそうだったぞ。
 聞こえているのかいないのか、スジニはすでに昇りつめた様子でぐったりと息を吐いた。腕を通したまま夜着が広がっている。頬を撫でられると、薄く目を開けて白い喉元を露に反らした。王は枕元の卓から瓶をとりあげ、水を一口含んだ。スジニが待ちわびた唇がようやく与えられ、喉を鳴らして水を飲む。もう一度。水の後には深い口づけが待っていた。
 「男に横抱きにされているお前はなかなか—そそる」
腕を掴まれ、強引に熱いものが差し込まれた。スジニは大きく息を吐いた。太腿が掴まれ、奥に届く。全身を朱に染めたスジニが声を上げると、もう一度、噛むような口づけが覆った。王の責めは始まったばかりだった。

 
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