屋根裏部屋
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朱雀の将軍

閑話

 「旦那、女難の相が出てますよ。」
タレに指を差され、タムドクは片肘をついた手で顔を覆った。なんてことを言うんだ。
 「あらいやだ、図星でした?」
からからと笑う。タレの店は相変わらずの繁盛ぶりで、タムドクはにぎやかな店内を突っ切って、まっすぐ裏へ通された。ちびちびと酒を舐めながらぼんやりと座っている様子に、タレはすぐさまちょっかいを出す。
 「よっぽど気をつけないとね、きれいな旦那。女で悩むことになりますよ。うじゃうじゃ言い寄ってくるでしょうからねぇ。」
たしかに、うじゃうじゃではあった。近隣の国が女を送りつけようとする。王族との婚姻の話、側室に、側女にと、その度に丁重に断りを入れ、怒ってみせ、面倒なことだった。ヒョンゴは淡々と報告し、対応する。本来王妃を迎える年頃の王に従いながら、外交に長けた王事はそれには触れようとしなかった。
 「それとも違うお悩み?」
にっこりと女将が笑う。覆った指の間から鷹揚な笑顔を見上げると、ついぽろりと本音がこぼれた。
 「自分の方が問題だ。」
おやまあ。にんまりと女将が笑う。
 「話しておくれな。」
捕まった。しまったと思うが、この女ならばいいかとも思う。いずれにしろ答を求めているわけではない。

 「押し倒されてそのまんまですか。あっはっは。そりゃあよっぽどいい女だったんだ。男冥利につきるじゃありませんか。」
案の定、タレは馬市での一件を大笑いした。さすがに女と再会したことは言えない。かなしいひと、あなたはとてもかなしそう。ではあれは同情なのか。自分はそれを受け入れたのか。それも言えない。話しはじめはしたものの、肝心のところは何も言えず、黙り込んだタムドクにタレはそっと酒を注いだ。
 「それで何です、なにが問題なんですって?」
 「いや、名も知れぬ相手と、言葉も交わさずにだぞ。」
練れた女将はタムドクを見つめ、大きな息を吐いてみせた。
 「この旦那ったら、ほんっっとにお育ちがいいんだねぇ。いいですか、そこらで女を買った男が、事の前になにか喋るとでもお思いですか?さっさとやることやって、それで仕舞いですよ。」
自分にも酒を注ぎ、そのままきゅっと呷ると手の甲で口元を拭う。
 「それともあの子に悪いって?」
タムドクは頬杖をついて杯を取り上げると、同じように一気に呷った。
 「そりゃあ旦那、思いが残ってりゃそういう気もするでしょうがね。そんなに姿がよけりゃ女がほっておかないし、旦那だって若いんだから、押し倒されりゃその気になって当たり前ですよ。」
 ふたつの杯が満たされる。
 「体だけ、体から、ってことも男女の仲には多いんだから。操を立てるなら、よっぽど気を張ってなきゃ、無理無理。」
杯を口の前で止めて、タムドクはしばらくじっとしていた。以前はこんな風に思ったことはなかった。自分はスジニを抱きたいのか?そんなことが想像できるか?ぼうっと止まったままの杯を奪って、タレが飲み干す。奪われるままにばたりと手を落とし、タムドクは肘枕をついて長椅子に伸びた。
 「旦那」
目を開けるとタレの顔が迫っていた。
 「そんな切ない顔して、あたしも押し倒しちまいたい。まったく」
そう言うと、舐めるような口づけをして立ち上がり、店に消えた。つくづくおれはこの女に甘えている。
 「女難ってお前のことだろう。」
悔し紛れに口に出すと、ようやく頭を振って起き上がった。

 

 
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