屋根裏部屋
space
space
 <--TOP PAGE 八年 <- Back   Next ->  
space space space space
line
space space space space
 <--エロティカIndex 1・・2・・3・・閑話・・4・・4-2・・5・・6・・7・・8  
space space space
テサギエロティカ

2 国境の女

  百済国境から戻ったチョロが、女を拾ったと言う。城主が女を?思わず口元を緩めて、タムドクは聞き返した。小さな国境紛争にも王か青龍将軍が出て行くのは、スジニを探しているのだと近しいものはみな知っていた。スジニが姿を消して二年目の春。ヒョンゴはそんな王をやきもきと見守ったが、何も口には出さなかった。
 「拾ったって、どういうことだ。」
百済の貴族の夫人らしい。国内城の門前の馬車を、回軍してきたチョロが見つけた。馬車の仕立ては取り繕ってあるが、誰何してみればいかにも敵国の身なりだ。近衛隊に託してあるという。
 「一体何者だ。何をしに来た?」
わからない。太王に面会を望んでいます。それっきり、タムドクに謎をかけたままチョロは下がってしまった。

 月のない夜だった。相変わらず夜になっても執務室の灯りが落ちることはない。書記と書類をかき分けて侍従が耳打ちすると、タムドクが頷いた。
 隣の小部屋には女が顔を伏せて座っていた。タムドクを見ると立ち上がり、優雅な礼をみせた。
 「わたしは敵国の者ですが、このようなところまで入れてよろしいのですか。」
豪奢な絹。豊かな髪は高く結い上げられている。冷たい美貌のほっそりとした麗人だった。敵国と言いながら権高な物言いに、タムドクは思わず白い歯を見せた。
 「忙しいんです。百済の方。あなたは丸腰の女人ですし、わたしに話があるとか。」
忙しいとにべもなく言われて、いかにも、そのようでございますね。つんと頭をそらして隣室を伺う。夜が更けても大勢が立ち働いていた。これはチョロが自分に会わせるわけだ。何者かと疑う立ち居振る舞いだ。
 「チュシンの太王陛下にお願いがございます。陛下にしか申し上げられません。」
百済の貴族が自分をチュシンの王と呼ぶのか。ますます驚いて、タムドクは侍従を下がらせた。
 女は黙って立ち上がると衿を緩め、上着の紐を解いた。タムドクは仰天して座を蹴って立ち上がったが、女はタムドクの目の前で胸元を開いた。
 「一体何を—」
胸帯に鍵が二本挟まっている。領主の印。女が囁いた。
 「国境を開けて、山賊を討ってください。」
タムドクは絶句して女の顔と胸元とを交互に見た。言いようのない妖しい美しさだった。

 

 

 軍の装備をもった山賊が、百済国境で略奪を繰り返していた。高句麗側を侵されるたびに小競り合いが起こり、チョロが戻ったばかりだった。
 「小さな里を治めておりますがもはや限界です。これでどうか、進軍を。」
引き込まれるような女の目に、ようやくタムドクの目が据えられた。
 「敵国の王を招き入れるのですか。こんなうまい話は罠ではないかと疑うとは思いませんか。普通、こういうことは自分の王に頼むものです。」
 「民は王を選ぶことができません。」
女の声に絶望があった。アシン王は戦費のために重税を課すことで知られ、裏で倭と結んでいるらしいともっぱらの噂だった。倭の兵を使い、自国の民を犠牲にして、高句麗を牽制しているとタムドクは読んでいる。
 山城の鍵。タムドクが考え始めたのを見て取ると、女はタムドクの前に跪いた。
 「お答を頂かなければ帰れません。」
タムドクは軽く目を閉じた。この女は本気だ。どうやら罠ではないらしいが、今この女に何をどこまで言うのか。
 思考が途切れた。女が膝に手を伸ばし、太腿を撫で上げていた。
 「なっ…」
やめろ、ようやく声を抑えて腰を浮かしたが、女はタムドクを見上げて目で促した。
 答えを。
 脚の付け根までを丹念に撫で上げられる。内股をやんわりと掴まれ、何かが背を這い上がる感覚にぞくっと震えた。
 「今進軍はできない。」
ようやく平常を装った声が出た。隣室の気配が迫るような気がした。女は絹の衣の下にさらに手を伸ばした。吸い付くような掌が這う。屹立を感じて女は小さく微笑んだ。
 「城ふたつでは不足でございますか。」
下帯の上から撫で上げる。払おうとしたタムドクの手が止まり、小さく溜息が漏れた。
 「小手先の、賊征伐では—終わらないからな。敵は」
息を呑んで、声が途切れた。取り出され掌に納められている。絹のような手が包んで撫で上げ、ゆっくりと擦った。
 「山賊は—倭の正規軍だろう? そなたらの王が—融通を、きかしている」
ほんの一瞬、愛撫の手が止まった。きれぎれに喘ぎながら、タムドクは端的に核心をついていた。
 「すべてがご想像の通りです。」
噂に名高い高句麗の太王。チュシン国を統べるという者は見目麗しい丈夫で、おそろしく切れ者だという。噂のとおりだ。こんな王もいる。
 タムドクが呻き、女を載せたまま膝が小さく跳ねた。見下ろすと、自身を口に含んだ女と目が合った。ならばどうされます。
 「ゆくゆくそなたらの王に—ケリをつけさせるつもりだが」
息が荒くなっていた。美しい眉をひそめ、椅子の肘を堅く握った。
 「百済の領土内だ。少し時間がかかる。」
女の頭がゆっくりと沈み込んだ。深く咥えられ、舌が這う。ついに喘ぎが漏れた。やめてくれ。
 頼みを聞き入れたようにゆっくりと抜かれた。濡れた屹立を掌が擦る。
 「それを少しでも早めて頂きたいのです。他国で悪政に苦しむわれらも、チュシンの民です。」
 再び舌に絡めとられ、吸われる。タムドクの手が女の頭を掴み、抱えた。女は深く頭を沈ませた。
 イッてよろしいですよ。陛下。

 

***

 

 何事もなかったかのように、女は座している。卓上には山城の鍵が二本、まっすぐに揃えて置かれていた。
 「国境まで送らせます。」
気怠さを隠せないタムドクの様子に、女はゆったりと微笑んだ。
 「都の芸妓だったわたくしを、夫が拾い上げてくれました。それから全てを与えてくれたのです。夫がわたくしのすべてでした。」
優雅に袖をさばいて立ち上がった。
 「お願いいたします。」
女はつんと頭を上げ、妖艶な笑みを残して去った。

 
space
 
space
 <--TOP PAGE   <- Back   Next ->  
space
line
space space space space
 <--エロティカIndex 1・・2・・3・・閑話・・4・・4-2・・5・・6・・7・・8  
 
  space  
line
  space  
  Copyright © kuro-kmd. All Rights Reserved. since 2010.  
  space